女子マンガの手帖

女子マンガ研究家・小田真琴のブログです。主に素晴らしいマンガを褒め称えます。

このあとテレビに出ます@鹿児島

このあと18時半から鹿児島テレビの「ナマ・イキVOICE」という番組に出ますー。マンガを紹介します。よろしかったらぜひ。

あといま発売中の「女性セブン」と「Hot Pepper Beauty」でもマンガを紹介しています。先日はラジオ(ヨコハマFMの
「Books A to Z」)にも出ました。ブログ全然書いてませんが私は元気です。

「女子マンガ月報」5月 - サイゾーウーマン

5月の「女子マンガ月報」がアップされました。


【女子マンガ月報 前編】女子マンガ界で「リケジョ」は根強し! 研究員女子、生物学に海洋動物学の注目作|サイゾーウーマン


【女子マンガ月報 後編】断絶されたSF/ファンタジーを少女マンガに取り戻す、『クジラの子らは砂上に歌う』|サイゾーウーマン


大多数の人にとって「いい本」ってのは「売れてる本」のことなのですよね。何か本が読みたいなー、と思い立ったとき、彼女ら/彼らが参照するのはベストセラーランキングなのです。多くの人が買っているのだからおもしろいに違いない、というその思い込みの根拠は深追いしないものとして、書評等を参考にして本を選ぶ人はごくごく少数でありましょう。

そうすると本のセールスの二極化が進行します。ベストセラーランキングに載るような「売れている本」はさらに売れて、その一方では人知れず返品され、絶版となる本が山のように存在します。そしてそうした本の中にも、とんでもなくおもしろい本は多数存在するのです。そんな本を掬い上げ、読者/消費者にまでつなげることが、わたしたちブックレビュアーの第一の使命であるはずです。

要は『ONE PIECE』以外にもおもしろいマンガはたくさんあるんだよ!ってことが言いたいわけです。これ以上おもしろいマンガは滅多に出てこないだろう、こんなにもマンガが豊作だった年はなかなかない、なんて思っていても、おもしろいマンガは続々と生まれ出て来ますし、毎年毎年、マンガ業界は大豊作であります。

しかしそれらが十分にメディア等で紹介されているとは思えません。マンガ評論というジャンルが商売として成立しづらいものであることや、お金を取れるマンガ評論が少ないことも原因でありましょう。自戒を込めてですが。

ネットでこの「女子マンガ月報」のような企画をやることは、ここ数年のわたしの念願でありました。もちろん1つの作品をじっくりと掘り下げるようなレビューも書きたいとは思うのですが、それでは追いつかないほどおもしろいマンガが多いもので。

実際ここには載せきれなかった作品もあります。清家雪子先生『月に吠えらんねえ』1(講談社)もそのひとつ。詳しくは作者による紹介ブログ「月吠ノート』をお読みいただくとして、詩人の狂気を表現するのにこんなにもうってつけの設定があったとは! 詩の引用も大変に効果的で、作者の近代詩に対する深い理解と綿密な研究が伺えます。文学好きの方はもちろん、変人などにご興味のある方はぜひぜひお読みください。


月に吠えらんねえ(1) (アフタヌーンKC)

月に吠えらんねえ(1) (アフタヌーンKC)


こちらで第1話を試し読みすることもできます。このあとさらにおもしろくなりますのでどうぞご期待ください。

ほか、今回はこんな作品をご紹介しています。詳しくはリンク先の記事をお読みくださいませ。


日の鳥

日の鳥

さいとうちほ先生『ビューティフル』文庫版の巻末エッセイを書きました

文庫化されたさいとうちほ先生の『ビューティフル』(小学館)の解説を書かせていただきました。全2巻の2巻目巻末に収録されています。



解説というかエッセイ? なんですが、まあ解説です。タイトルは「幸せな夢の中で」。我ながらスカしていやがる。



解説を書かせていただいただけで身に余る光栄であるのに、なんとTwitterでさいとう先生からお声がけいただきました…!



基本的にわたしにとってマンガ家さんは神に等しい存在ですから、これはもはや預言レベルの大事件です。もうギャラなんて要らない…!(それは嘘)

さいとうちほ先生と言えばゴージャス&ジェットコースターな、サービス精神溢れる作風で大人気ですが、本作でもそんなさいとう節は絶好調。チェルノブイリ、バレエ、近親相姦など要素てんこ盛りの超一級エンタテイメント作品『ビューティフル』、ぜひぜひお読みくださいませ。


「サイゾーウーマン」で新連載「女子マンガ月報」が始まりました

なんとなくご無沙汰していた「サイゾーウーマン」で新連載が始まりました。その名も「『なんかおもしろいマンガ』あります 〜女子マンガ月報〜」。長いので「女子マンガ月報」でよろしくお願いします。さっそくですがこちらが4月分。


『なんかおもしろいマンガ』あります 〜女子マンガ月報〜【4月】前編 かつては売れっ子、低迷するアラフォー女漫画家の自虐コメディ『都の昼寝物語』の叫び(1/2)|サイゾーウーマン


『なんかおもしろいマンガ』あります 〜女子マンガ月報〜【4月】後編 見世物小屋一座の擬似家族が漂う、“ここではないどこか”の誘惑と余韻――『五色の舟』|サイゾーウーマン


この連載ではできる限り多くのマンガを紹介したいと考えています。しかもなるべく早く。というのもこれはマンガに限った話ではないのですが、新刊は発売後1週間〜1か月のセールスがとても重要なんですね。版元はそれをもとに重版するか、より熱心にPRすべきかを判断しますし、書店側はもっといいコーナーに置くべきか、はたまた返品すべきかを判断します。

わたしがこの仕事をやっているのは「自分が読んでいて楽しいと思えるマンガをもっと読みたい」という非常にエゴイスティックな動機によります(もちろんほかにも理由はありますけど)。そのためには売れてもらわなくては困ってしまうわけで、そして少なくとも自分が面白いと思ったマンガはほかの誰かにとっても面白い筈だという楽観的な信念のもと、その「誰か」がそのマンガを発見してくれる機会を増やしたいのです。もしくは雑誌やらWebやらの少女マンガ特集がこちらの記事を参考に作品を選んで紹介してくれても万々歳ですね。

この連載では「話題」「雑誌」「単行本」「今月の注目」という4つのカテゴリに分けて作品を紹介しています。「雑誌」というカテゴリはちょっと新しいかなと自画自賛。これも前述のとおり少しでも女性向けマンガ雑誌が売れてくれたらいいな、という思いが動機になっています。ネットが拡大しつつあるとはいえ、やはり雑誌はまだまだ新人の発掘・育成の主力機関であるべきだと思いますし、そのためには少しでも売れてくれないと困ってしまうのです。

毎月上旬(できれば第1週)にアップ予定です。もうすぐ5月分がアップされる筈なんですがまだかしら。マンガ探しの手がかりにしていただければと願うばかりであります。


いちばんいいスカート (フラワーコミックスアルファ)

いちばんいいスカート (フラワーコミックスアルファ)

インタビューされました

実は醜い中年男性であるところのわたくしですが、森永乳業「PARM」ブランドサイトのWebマガジン「Daily Premium Calendar」で薄汚いツラを晒しつつべらべら喋っています。


DailyPremiumCalendar(デイリープレミアムカレンダー)|スペシャルインタビュー|「女性は一度、少女漫画から離れてしまう」少女漫画回帰のすすめ 少女漫画研究家 小田真琴 前編


DailyPremiumCalendar(デイリープレミアムカレンダー)|スペシャルインタビュー|少女漫画研究家による、大人の女性にこそ読んでほしい「少女漫画」4選 少女漫画研究家 小田真琴 後編


わたしのツラはどうでもいいので自慢の素敵部屋を見てください!

「SPUR」5、6月号もまとめてドン

「SPUR」の「マンガの中の私たち」も2冊分溜まってました。まずは5月号(3月23日発売)。鳥飼茜先生の『おんなのいえ』(講談社)をご紹介しています。



鳥飼先生、すっかり売れっ子ですねー。「モーニングtwo」では『先生の白い嘘』、「フィール・ヤング」では『地獄のガールフレンド』も連載中。『おんなのいえ』も3巻に突入して絶好調であります。『おはようおかえり』もそうでしたけど、お話が進めば進むほど、キャラクターが走るんですよね。ちなみに3巻に登場する「婦人画報」のエピソードは、以前にわたしが「婦人画報」の連載でご紹介したことがご縁になったようです(笑)。嬉しいですね。


おんなのいえ(1) (KCデラックス BE LOVE)

おんなのいえ(1) (KCデラックス BE LOVE)

おんなのいえ(2) (KCデラックス BE LOVE)

おんなのいえ(2) (KCデラックス BE LOVE)

おんなのいえ(3) (KCデラックス BE LOVE)

おんなのいえ(3) (KCデラックス BE LOVE)


現在発売中の6月号(4月23日発売)では勝田文先生の『小僧の寿し』(集英社)をご紹介しています。



この短編集の『ととせの鴨』って作品が素晴らしいんですよ! 7ページにもわたる「10年」という時間の表現。コマの隅から隅まで味わい尽くしていただきたいのですが、それ以外にも本作では新たな試みがたくさんあるんですよね。勝田先生としては珍しいコマ割りが多数見られ、新境地を感じさせます。


小僧の寿し (マーガレットコミックス)

小僧の寿し (マーガレットコミックス)


これからもずっと読み続けたい作家さんです。陰ながら応援しております。


「婦人画報」4〜6月号をまとめてドン

主にこのブログはわたしだって仕事してるんですよ!とアピールするために書いているものなのですが、どうやらそれだけではモチベーションとしては弱いようで、なかなか継続して書けません。そもそも一般読者の方にはあんまり有用な情報でもありませんで、どうか雑誌やWebをご覧いただければと思うばかりであります。

そんなこんなで溜まってしまったお仕事の告知ですが、この間に「婦人画報」は3冊も刊行されてしまいました。4月号(3月1日発売)では萩尾望都先生の『王妃マルゴ』(集英社)をご紹介しました。



萩尾先生の「軽さ」が最大限に生きている作品だと思います。時代考証の細やかさも素晴らしく、特に衣装に関してはかなりこだわっていらっしゃる様子。細かいところでは「病気」の描写も効いてますよね。身体のささやかな不快感、違和感から、死に至る病までは地続きである様が、自然にさらりと描かれています。ああ、当時はこういう感じだったのだろうなあ、という説得力があります。


王妃マルゴ volume 1 (愛蔵版コミックス)

王妃マルゴ volume 1 (愛蔵版コミックス)

王妃マルゴ 2 (愛蔵版コミックス)

王妃マルゴ 2 (愛蔵版コミックス)


5月号(4月1日発売)では小川彌生先生の『銀盤騎士』(講談社)をご紹介しました。



フィギュアスケート世界選手権の熱が冷めないうちに…!と。おもしろいのはもちろんのこと、さすが筋金入りのスケヲタである小川先生、演技シーンの描写が正確かつ美しいのです。さりげない体の使い方や、ジャンプの準備動作まで、いちばん美しい瞬間を見事に切り出しています。スケヲタのみなさんはもちろんのこと、多くの人に読んでいただきたいラブコメです。


銀盤騎士(1) (KC KISS)

銀盤騎士(1) (KC KISS)

銀盤騎士(2) (KC KISS)

銀盤騎士(2) (KC KISS)

銀盤騎士(3) (KC KISS)

銀盤騎士(3) (KC KISS)


余談ですがマンガにも登場する4Lz、すでにけっこう実戦段階の技術になりつつあります。こちら↓はリッポン。



来シーズンあたりは何人か挑戦してくるんじゃないでしょうか。

で、現在発売中の6月号では逢坂みえこ先生の『プロチチ』(講談社)をご紹介しています。



ちょうど完結巻となる4巻が出たばかりです。さまざまな要素のある本作ですが、どこを読んでも逢坂先生の優しい眼差しに心打たれます。アスペルガー症候群の描写も、さぞかし丁寧に取材してお描きになったのだろうなあ、というリアリティ。生きることの多様性が、さまざまなキャラクターを通じてしなやかに描かれています。全人類必読ですよ。


プロチチ(1) (イブニングKC)

プロチチ(1) (イブニングKC)

プロチチ(2) (イブニングKC)

プロチチ(2) (イブニングKC)

プロチチ(3) (イブニングKC)

プロチチ(3) (イブニングKC)

プロチチ(4)<完> (イブニングKC)

プロチチ(4)<完> (イブニングKC)


マンガとは縁遠そうな「婦人画報」読者のみなさんに、少しでも多くのマンガをお読みいただけたら幸いであります。


婦人画報 2014年 04月号

婦人画報 2014年 04月号