女子マンガの手帖

女子マンガ研究家・小田真琴のブログです。主に素晴らしいマンガを褒め称えます。

「FRaU」9月号「女子マンガ大賞」でべらべら喋っています。

久々の「FRaU」です。



そもそもわたしの「女子マンガ研究家」という肩書は当時「FRaU」編集部にいらっしゃったS井さん(今は異動なさってしまいました)がつけてくださったもので、また初めて原稿を書いたのも「FRaU」でありました。お世話になっております。



さらりと顔出ししておりますが、どうぞあまり気になさらず。実はオッサンですみません。ちなみにわたしの「女子マンガ大賞」候補作はこの5作品+1作品でした。


雲田はるこ昭和元禄落語心中』(講談社) 

昭和元禄落語心中(4) (KCx)

昭和元禄落語心中(4) (KCx)

4巻の「死神」のシーンは痺れた。高値安定。いまいちばんおもしろいマンガ。手塚治虫文化賞獲って欲しかった。


岩本ナオ町でうわさの天狗の子』(小学館) 

10巻での急展開にも崩れない世界観と、見事に回収されゆく伏線。ほのぼの面白いだけじゃない、骨太な女子マンガ。


鳥飼茜『おはようおかえり』(講談社) 

見事な構成美と突き刺さるネーム。「時間」がテーマということであれば、このマンガの時間の感覚はとても美しい。一瞬の美しさ。『おんなのいえ』も超面白い。


東村アキコ『かくかくしかじか』(集英社) 

かくかくしかじか 2

かくかくしかじか 2

NANA」のパロディかと思いきや、笑えつつも泣ける非常に上質な自伝マンガだった。「後悔」という感情の普遍性。胸に迫る。


鴨居まさね君の天井は僕の床』(集英社) 

君の天井は僕の床 3 (クイーンズコミックス)

君の天井は僕の床 3 (クイーンズコミックス)

40代女子を真正面から描いた女子マンガの最先端。自らの死すらも射程に捉える時間感覚は40代ならでは。全女子必読。


【番外編】九井諒子『ひきだしにテラリウム』(イースト・プレス

ひきだしにテラリウム

ひきだしにテラリウム

女子マンガとはいえないけど、ここ最近の最大の成果。


「時間」をテーマに選びました。年輪を重ねた大人の女性が読む「女子マンガ」の本質は、現在を基点として前後に伸びる時間軸にあると考えるからです。少女マンガは概ね一方通行、未来へ向けて描かれますが(ゴールとしての恋の成就など)、女子マンガにはむしろ過去を重視した重層的な時間感覚が存在するように思います。また、最近の勢い、というよりもここ数年の「女子マンガ」を代表する作品を挙げたつもりです。

で、大賞は『にこたま』でした。これは絶妙なチョイスでありましょう。


にこたま(5) <完> (モーニング KC)

にこたま(5) <完> (モーニング KC)


自分のまわりのマンガ好きはたいてい夢中になっていた『にこたま』でしたが、セールス的にはおそらく伸び悩んでいるのではと推察します。とりたててマンガが好きでない人々にも読んで欲しいと、審査員全員で願った結果としての選出でありました。

ほか座談会に登場した作品で、著しくオススメしたいのはコチラ。


10DANCE 1 (バンブー・コミックス  麗人セレクション)

10DANCE 1 (バンブー・コミックス 麗人セレクション)


BLが苦手で常々そのことに劣等感を覚えるわたし(オッサン)でも、これはかなり楽しく読ませていただきました。わたしと同じくBLに苦手意識がある方にもぜひオススメしたいです。

ほか雲田先生と田中相先生の対談が超興味深いです。こちらもぜひぜひ。なお、選考会のダイジェストはこちらで試し読みできます。