女子マンガの手帖

女子マンガ研究家・小田真琴のブログです。主に素晴らしいマンガを褒め称えます。

「婦人画報」2月号「小田真琴の現代マンガ考」と「BE・LOVE」2号の『おんなのいえ』

告知しそこねていましたが、「婦人画報」で新連載が始まっています。題して「小田真琴の現代マンガ考」。なんだか偉そうで申し訳ない…。



第2回でご紹介したのは、「SPUR」に引き続き池辺葵先生の『どぶがわ』です。



しばらくは推し続けます! あらゆる年代の方にお読みいただきたい。

ところで先月号では鳥飼茜先生の『おんなのいえ』をご紹介したのですが、


おんなのいえ(1) (KCデラックス BE LOVE)

おんなのいえ(1) (KCデラックス BE LOVE)

おんなのいえ(2) (KCデラックス BE LOVE)

おんなのいえ(2) (KCデラックス BE LOVE)


なんと現在発売中の「BE・LOVE」2号に掲載されている『おんなのいえ』#17に、「婦人画報」を登場させていただいております(笑)。これは嬉しい!




このくだり、とっても面白いのでぜひご覧ください。鳥飼先生、ありがとうございました。

BE・LOVE」と言えば最近始まった大久保ヒロミ先生の『人は見た目が100パーセント』も大好きです。笑えます。こちらも併せてぜひぜひ。


「SPUR」2月号 新連載「マンガの中の私たち」第1回とクリスマスケーキ

「SPUR」で新連載が始まりました。旧連載「マンガの中の◯◯男子図鑑」では「男子」に焦点を当ててマンガを紹介してきたのですが、新連載「マンガの中の私たち」では「女子」を軸にマンガを紹介していきたいと考えています。引き続きご贔屓に。


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第1回のテーマは池辺葵先生の新刊『どぶがわ』です。



どぶがわ (A.L.C.DX)

どぶがわ (A.L.C.DX)


これは本当にすごいマンガです。11月発売の本作は、雑誌や『このマンガがすごい!』などの主なランキングものには惜しくも間に合わなかったのですが、ワタクシ的には今年のベストです。

谷底の臭気漂うどぶがわのほとりに安息の場所を見出した老婆の清貧な日常と、彼女が見る白日夢が本作の主な舞台。白日夢の中の彼女は瀟洒な洋館に住む四人姉妹の長女で、料理上手の家政婦が作るフォアグラのソテーが大好物。しかし一方現実の彼女ときたら、夜ご飯はもやしと豆腐のみ…。

この残酷な描写を池辺先生はその愛らしくも美しい絵でやるものですからたまりません。ほかにもたとえばP75、空想の中の家政婦との出会いのシーンで、浮浪児同然の彼女がもたれかかる大きな箱には、ローマ字で「NAMAGOMI」と書かれています。さりげなくすごいシーンです。

交差する現実と虚構。空想に挿し込まれる現実(カリフォルニア州のフォアグラ禁止法...etc.)。ドライヤーで髪を乾かす一方で、騎士が馬に乗って街中のアスファルトの道を走り、人々はレコードで音楽を聞きます。

光と水のイメージもとても印象的です。太陽の温かな光とヘンデルの「水上の音楽」。五感を刺激する描写はもちろん嗅覚にも鋭く迫ります。ラストシーン、四姉妹が草むらに横たわりにおいに関して語り合うシーンは、老婆の最期が草むらの上であったことを暗示しているのではないでしょうか。

なんという豊かなマンガ世界でしょう。池辺先生は作家としてまたひとつ上のステージに上がって行ったようです。あまりにも素晴らしいので今週金曜日発売の「婦人画報」でも紹介していますが、それはまたのちほど…。

作中に登場するこちらの小説もぜひご併読ください。


バベットの晩餐会 (ちくま文庫)

バベットの晩餐会 (ちくま文庫)


余談ですが今年のクリスマスケーキはオーボンヴュータンにいたしました。ホワイトチョコのデコレーションがとても美しいのです。



ではでは。

「ダ・ヴィンチ」1月号と『このマンガがすごい!2014』

やっとリアルタイムに追いついた…。年末恒例のこちらの2冊。


このマンガがすごい! 2014

このマンガがすごい! 2014


ダ・ヴィンチ」では毎年恒例の「本読みが選ぶ、『とっておき』の今年の3冊」をセレクトしています。今年は伊藤剛さん、藤本由香里さんとそれぞれ1冊ずつかぶってしまいました。せっかくだから別の本を挙げればよかったですよ。できるだけ多くの本を紹介したいのです。『逃げるは〜』とどちらにしようか迷っていたのが『とりかえ・ばや』で、そしてコメントによると藤本さんもやはり『とりかえ・ばや』を入れるかどうかで迷っていたようで、ああこっちにすればよかったと後悔。

別冊付録の「別ダ」にもちょろっと登場しています。コミックエッセイに関する座談会です。南信長さん、ヤマダトモコさん、門倉紫麻さんという偉大なる諸先輩方の片隅でおとなしくしています。いや座談会なんだからおとなしくしてちゃダメだろ。こちらでもちょろっと読めます。

このマンガがすごい!2014』は明日発売です。1位に関してはノーコメントで! まだじっくりとは読んでいないのですが、後半の「各界のマンガ好きが選ぶ〜」で誰がどのマンガを推しているのかを見るのが毎年楽しみです。この人とは気が合いそうだな〜とか、この人とは仲良くなれないな!とか、勝手に思う年の瀬であります。

その他最近のお仕事 〜「週刊ザテレビジョン」「ar」「FRaU」〜

なんでこんなに溜めてしまったのか…。すみません、とっくに書店からは姿を消してしまいましたが、「週刊ザテレビジョン」で、映像化される『失恋ショコラティエ』と『ホットロード』に関してちょこっとだけコメントしました。



このお仕事がきっかけで何十年かぶりに『ホットロード』を読み返したのですが、お母さんが不憫でなりませんでした。加齢によって読み方も変わるものですな。


「雌ガール」でおなじみの「ar」12月号では「女子マンガとセクシー」に関してコラムを書きました。



これはまだ書店に並んでますよね? ぎりぎりセーフか。完全に趣味に走ったセレクトをしていますが、『海の天辺』の山崎先生はほんとまじセクシーでかっこいい女性だと思います。



FRaU」12月号ではデリとかを紹介しています。また食い物か! そんな調子で食べ続けていたらけっこうな太ましい体になってしまったもので、現在ダイエット中です。豆腐ダイエット。朝と昼は普通に食べるのですが、夕食は豆腐のみ。外食は週に一度だけならOK。冷奴へのトッピング、および湯豆腐への野菜の追加は可とします。おかげで1か月半で11kgも痩せましたよ! ダイエット関係のお仕事もお待ちしていますw

「SPUR」1月号でなぜかレストランをオススメしています。

で、1回お休みとなった1月号では、なぜかオススメのレストランを紹介しています。



何店か候補に挙げたのですが、諸事情によりこちらに決定いたしました。



タルト・フランベはなんというかピザのようなアルザス料理でして、ピザほどの華やかさはないのですが、素朴でおいしいんですよ。玉ねぎとベーコンはもっともオーソドックスなトッピングでして、生地にはフロマージュ・ブランを塗ります。「ジョンティ」のタルト・フランベはまじおいしいので、機会がございましたらぜひお召し上がりください。最近だと代官山の「Äta」でも見かけましたね、タルト・フランベ。こちらはエビと何かがトッピングされていたような気がします。

今年いちばんのオススメはホントは築地の「歩歩路」でした。気軽にヌーベルシノワがいただけるいいお店です。シェフは「トゥーランドット」出身。コースは5000円からで、料理は季節によって変わります。先日いただいたサケとイクラのチャーハンもおいしかった〜。



デザートのケーファー茶のプリンとプーアル茶のゼリーがまた絶品でして。



とか書いてるうちにまた行きたくなってきてしまいましたぜ…。

「SPUR」12月号 「マンガの中の◯◯男子図鑑」第11回

怠慢ぶっこいてたらもう年末ですわ。すでに書店からは姿を消してしまいましたが、「SPUR」12月号の「マンガの中の◯◯男子図鑑」は一応最終回でした。1号お休みして2月号から新連載が始まります。



『アヤメくん〜』面白いっすよなー。前作『はしっこの恋』もそうでしたけど、町先生には独特のゆるいグルーヴ感があって、読めば読むほどハマってしまいます。フィーヤン系ではいまいちばん好きな作家さんです。


脳内ポイズンベリー 1 (クイーンズコミックス)

脳内ポイズンベリー 1 (クイーンズコミックス)

「SPUR」11月号 「マンガの中の◯◯男子」第10回「なぜモラトリアム男子は年下女子にモテるのか?」

またボケボケしていると次号が出てしまう…。



唐突に秋めいてまいりまして、今日の銀座はどこもかしこも買い物客で賑わっておりました。そろそろ秋冬ものでも買おうかしら…というあなたにオススメしたい「SPUR」11月号であります(宣伝)。



今回は「なぜモラトリアム男子は年下女子にモテるのか?」と題しまして、こちらの2冊を紹介しています。


屋上の君 (KCx)

屋上の君 (KCx)

ツヅキくんと犬部のこと(上)

ツヅキくんと犬部のこと(上)


瀬川先生は、『PIVO!』もそうでしたけど、まさに成長の途上にある子どもを描くのが本当にお上手です。それと『ツヅキくん〜』、こういう表現は語弊があるとは想いますが、マジョリティ寄りの衿沢先生が私はとても好きです。

そもそもこのテーマは少女マンガに見られる「オッサンと幼女」図像から発想されたものです。近年では『うさぎドロップ』がそうですよね(ある知人はりんが女子高生になった途端にさっぱり興味を失っていました。ひどい…)。古くは大和和紀先生の『杏奈と祭りばやし』。この作品、以前は『はいからさんが通る』の番外編をまとめた1冊に収録されていたのですが、今はどこで読めるのでしょうか。号泣必至の名作ですので、機会があればぜひ。

そろそろ年末のランキングものの季節です。今年の少女マンガ界は、昨年の『俺物語!!』のようなわかりやすい台風の目玉がなく、さっぱり予想ができません。しかしまあ結果の如何は別として、ランキングものによってたくさんの作品が一般向けに紹介されることこそ大事だと思うわけです。