女子マンガの手帖

女子マンガ研究家・小田真琴のブログです。主に素晴らしいマンガを褒め称えます。

「女子マンガ月報」5月 - サイゾーウーマン

5月の「女子マンガ月報」がアップされました。


【女子マンガ月報 前編】女子マンガ界で「リケジョ」は根強し! 研究員女子、生物学に海洋動物学の注目作|サイゾーウーマン


【女子マンガ月報 後編】断絶されたSF/ファンタジーを少女マンガに取り戻す、『クジラの子らは砂上に歌う』|サイゾーウーマン


大多数の人にとって「いい本」ってのは「売れてる本」のことなのですよね。何か本が読みたいなー、と思い立ったとき、彼女ら/彼らが参照するのはベストセラーランキングなのです。多くの人が買っているのだからおもしろいに違いない、というその思い込みの根拠は深追いしないものとして、書評等を参考にして本を選ぶ人はごくごく少数でありましょう。

そうすると本のセールスの二極化が進行します。ベストセラーランキングに載るような「売れている本」はさらに売れて、その一方では人知れず返品され、絶版となる本が山のように存在します。そしてそうした本の中にも、とんでもなくおもしろい本は多数存在するのです。そんな本を掬い上げ、読者/消費者にまでつなげることが、わたしたちブックレビュアーの第一の使命であるはずです。

要は『ONE PIECE』以外にもおもしろいマンガはたくさんあるんだよ!ってことが言いたいわけです。これ以上おもしろいマンガは滅多に出てこないだろう、こんなにもマンガが豊作だった年はなかなかない、なんて思っていても、おもしろいマンガは続々と生まれ出て来ますし、毎年毎年、マンガ業界は大豊作であります。

しかしそれらが十分にメディア等で紹介されているとは思えません。マンガ評論というジャンルが商売として成立しづらいものであることや、お金を取れるマンガ評論が少ないことも原因でありましょう。自戒を込めてですが。

ネットでこの「女子マンガ月報」のような企画をやることは、ここ数年のわたしの念願でありました。もちろん1つの作品をじっくりと掘り下げるようなレビューも書きたいとは思うのですが、それでは追いつかないほどおもしろいマンガが多いもので。

実際ここには載せきれなかった作品もあります。清家雪子先生『月に吠えらんねえ』1(講談社)もそのひとつ。詳しくは作者による紹介ブログ「月吠ノート』をお読みいただくとして、詩人の狂気を表現するのにこんなにもうってつけの設定があったとは! 詩の引用も大変に効果的で、作者の近代詩に対する深い理解と綿密な研究が伺えます。文学好きの方はもちろん、変人などにご興味のある方はぜひぜひお読みください。


月に吠えらんねえ(1) (アフタヌーンKC)

月に吠えらんねえ(1) (アフタヌーンKC)


こちらで第1話を試し読みすることもできます。このあとさらにおもしろくなりますのでどうぞご期待ください。

ほか、今回はこんな作品をご紹介しています。詳しくはリンク先の記事をお読みくださいませ。


日の鳥

日の鳥