女子マンガの手帖

女子マンガ研究家・小田真琴のブログです。主に素晴らしいマンガを褒め称えます。

「SPUR」11月号 「マンガの中の◯◯男子」第10回「なぜモラトリアム男子は年下女子にモテるのか?」

またボケボケしていると次号が出てしまう…。



唐突に秋めいてまいりまして、今日の銀座はどこもかしこも買い物客で賑わっておりました。そろそろ秋冬ものでも買おうかしら…というあなたにオススメしたい「SPUR」11月号であります(宣伝)。



今回は「なぜモラトリアム男子は年下女子にモテるのか?」と題しまして、こちらの2冊を紹介しています。


屋上の君 (KCx)

屋上の君 (KCx)

ツヅキくんと犬部のこと(上)

ツヅキくんと犬部のこと(上)


瀬川先生は、『PIVO!』もそうでしたけど、まさに成長の途上にある子どもを描くのが本当にお上手です。それと『ツヅキくん〜』、こういう表現は語弊があるとは想いますが、マジョリティ寄りの衿沢先生が私はとても好きです。

そもそもこのテーマは少女マンガに見られる「オッサンと幼女」図像から発想されたものです。近年では『うさぎドロップ』がそうですよね(ある知人はりんが女子高生になった途端にさっぱり興味を失っていました。ひどい…)。古くは大和和紀先生の『杏奈と祭りばやし』。この作品、以前は『はいからさんが通る』の番外編をまとめた1冊に収録されていたのですが、今はどこで読めるのでしょうか。号泣必至の名作ですので、機会があればぜひ。

そろそろ年末のランキングものの季節です。今年の少女マンガ界は、昨年の『俺物語!!』のようなわかりやすい台風の目玉がなく、さっぱり予想ができません。しかしまあ結果の如何は別として、ランキングものによってたくさんの作品が一般向けに紹介されることこそ大事だと思うわけです。

「SPUR」10月号 「マンガの中の◯◯男子」第9回とおもたせ特集

ボケボケしている間に11月号が届いてしまいました。ぐげげげげげ。しかしとりあえずは10月号のお話を。




「マンガの中の◯◯男子」第10回では「軍服女子と部下男子は宿命の恋に落ちるのだ」と題しまして、久世番子先生の『パレス・メイヂ』と『ベルばら』を紹介しています。



パレス・メイヂ 1 (花とゆめCOMICS)

パレス・メイヂ 1 (花とゆめCOMICS)


と書いたところでけっこう大きな地震が来ました。みなさん大丈夫だったでしょうか。

久世先生には最近作からしてエッセイコミック作家の印象をお持ちの方も多いと思うのですが、ストーリーマンガもそれはそれは素晴らしいものです。かわかみじゅんこ先生や伊藤理佐先生と同じく、久世先生もまたエッセイとストーリーを見事に描き分けることのできる作家さんであったのです。本作は2013年のベスト10には確実に入るであろう良作です。ぜひお読みください。

また同号ではおもたせ特集にもちょろっと登場しています。



パンとかお菓子が大好きでして…。今回は近ごろ話題の食パン専門パン屋さん「CENTRE」(東京都中央区銀座1-2-1 東京高速道路紺屋ビル1F)の角食パンを紹介しました。こちらは日本一おいしいバゲットを作るブーランジェリー「VIRON」の系列店になりまして、バゲットから一転、食パンのみで勝負するという一風変わったお店です。この食パンがまたおいしいんですわ。強い甘みと豊かな粉の風味、食感は異次元のやわらかさで、たとえばボルディエやエシレなどのおいしい有塩バター(もちろん室温に戻してやわらかくしてから)をつけたり、フェルベールやミオなどのおいしいコンフィチュールをつけたりして食べるとそれはそれはもうたまらんおいしさです。

イートインではおいしいサンドイッチなどをいただくことができます。イチオシはチーズトースト。こんな感じのプレゼンテーション含めてお楽しみください。

夜は夜でVIRONのパンやシャルキュトリが食べ放題になるコースが超楽しいです。銀座一丁目から徒歩1分、有楽町や京橋からも近いので、お買い物のついでにぜひお立ち寄りくださいませ。

「FRaU」9月号「女子マンガ大賞」でべらべら喋っています。

久々の「FRaU」です。



そもそもわたしの「女子マンガ研究家」という肩書は当時「FRaU」編集部にいらっしゃったS井さん(今は異動なさってしまいました)がつけてくださったもので、また初めて原稿を書いたのも「FRaU」でありました。お世話になっております。



さらりと顔出ししておりますが、どうぞあまり気になさらず。実はオッサンですみません。ちなみにわたしの「女子マンガ大賞」候補作はこの5作品+1作品でした。


雲田はるこ昭和元禄落語心中』(講談社) 

昭和元禄落語心中(4) (KCx)

昭和元禄落語心中(4) (KCx)

4巻の「死神」のシーンは痺れた。高値安定。いまいちばんおもしろいマンガ。手塚治虫文化賞獲って欲しかった。


岩本ナオ町でうわさの天狗の子』(小学館) 

10巻での急展開にも崩れない世界観と、見事に回収されゆく伏線。ほのぼの面白いだけじゃない、骨太な女子マンガ。


鳥飼茜『おはようおかえり』(講談社) 

見事な構成美と突き刺さるネーム。「時間」がテーマということであれば、このマンガの時間の感覚はとても美しい。一瞬の美しさ。『おんなのいえ』も超面白い。


東村アキコ『かくかくしかじか』(集英社) 

かくかくしかじか 2

かくかくしかじか 2

NANA」のパロディかと思いきや、笑えつつも泣ける非常に上質な自伝マンガだった。「後悔」という感情の普遍性。胸に迫る。


鴨居まさね君の天井は僕の床』(集英社) 

君の天井は僕の床 3 (クイーンズコミックス)

君の天井は僕の床 3 (クイーンズコミックス)

40代女子を真正面から描いた女子マンガの最先端。自らの死すらも射程に捉える時間感覚は40代ならでは。全女子必読。


【番外編】九井諒子『ひきだしにテラリウム』(イースト・プレス

ひきだしにテラリウム

ひきだしにテラリウム

女子マンガとはいえないけど、ここ最近の最大の成果。


「時間」をテーマに選びました。年輪を重ねた大人の女性が読む「女子マンガ」の本質は、現在を基点として前後に伸びる時間軸にあると考えるからです。少女マンガは概ね一方通行、未来へ向けて描かれますが(ゴールとしての恋の成就など)、女子マンガにはむしろ過去を重視した重層的な時間感覚が存在するように思います。また、最近の勢い、というよりもここ数年の「女子マンガ」を代表する作品を挙げたつもりです。

で、大賞は『にこたま』でした。これは絶妙なチョイスでありましょう。


にこたま(5) <完> (モーニング KC)

にこたま(5) <完> (モーニング KC)


自分のまわりのマンガ好きはたいてい夢中になっていた『にこたま』でしたが、セールス的にはおそらく伸び悩んでいるのではと推察します。とりたててマンガが好きでない人々にも読んで欲しいと、審査員全員で願った結果としての選出でありました。

ほか座談会に登場した作品で、著しくオススメしたいのはコチラ。


10DANCE 1 (バンブー・コミックス  麗人セレクション)

10DANCE 1 (バンブー・コミックス 麗人セレクション)


BLが苦手で常々そのことに劣等感を覚えるわたし(オッサン)でも、これはかなり楽しく読ませていただきました。わたしと同じくBLに苦手意識がある方にもぜひオススメしたいです。

ほか雲田先生と田中相先生の対談が超興味深いです。こちらもぜひぜひ。なお、選考会のダイジェストはこちらで試し読みできます。

「MdN」9月号で少女マンガのブックデザインに関してちょろっと書いています。

珍しく専門誌からお仕事をいただきました。エディトリアルデザイナーやグラフィックデザイナーのみなさんにはおなじみの「MdN」です。今号の特集は「マンガとアニメのグラフィックデザイン」。



その中で「少女マンガのブックデザイン」という2ページのコラムを書きました。



冒頭に登場するのは「のっぱら」こと『永遠の野原』ですよ! もう、大好きです。本稿は『永遠の野原』の判型のお話からスタートします。この「のっぱら」、3巻になると突然ワイド判=A5判になるんですよね。その不自然さに目を瞑ってでも、1990年前後の「ぶ〜け」編集部は単行本のワイド判化を推進したかったのでしょう。併せて'90年代中盤の「FEEL YOUNG」によるA5判攻勢(草創期の「FEELコミックス」はB6判も多かったのです)を一連の流れと見て、少女マンガの年齢層の拡大をちょろっとだけ考察しています。

ちなみに自分の手元にあるいちばん古い「ぶ〜けミックスワイド版」はこちら。



こちらも懐かしいですよなあ…。ちなみに初版が1988年12月14日刊行。なぜこの作品が真っ先にワイド判で刊行されたのでしょうか? ギャグだから? そこは謎です。

もともと「ぶ〜け」は美麗な絵をお描きになる作家さんが多かったのですよね。内田善美先生、松苗あけみ先生、吉野朔実先生、水樹和佳先生…。美しい絵を大きな判型で楽しみたいというニーズは当然あったでしょうし、定価こそ上がってしまいましたが、ファンのみなさんは喜んでいらっしゃったのではないでしょうか。とは言えチェック柄がかわいらしい新書版の「ぶ〜けミックス」にも捨て難い魅力があるのですが。

ほか、吉田秋生先生の『BANANA FISH』の新書版(表1側に日本語がほとんどない攻めのデザイン!)、高野文子先生の『おともだち』、朝日ソノラマ版の『大島弓子選集』などに触れています。


おともだち

おともだち


『おともだち』は南伸坊さんのデザイン、『大島弓子選集』は羽良多平吉さんのデザインですね。触れておいてなんですが、この中で唯一今も入手できるのは『おともだち』のみですね…。

みなさんは少女マンガのどの単行本のブックデザインがお好きでしょうか? お楽しみくださいませ。

「SPUR」9月号 「マンガの中の◯◯男子」第8回

もう第8回ですか。早いものです。



今回は「ダンス男子がDangDang気になる!」と題しまして、小川彌生先生の『銀盤騎士』と小玉ユキ先生の『月影ベイベ』を紹介しています。


銀盤騎士(1) (KC KISS)

銀盤騎士(1) (KC KISS)


どちらもとても面白いのですが、『銀盤騎士』のスケヲタ的な目線がほんとたまらんです。さすがリアルスケヲタの小川先生であります。『月影ベイベ』はこれからどこにでも転がれるミステリアスな展開がたまらんです。前作を超える傑作になりそうな予感です。

「CREA」8月号でわが家のマンガ会の様子が紹介されています。

CREA」8月号はホームパーティ特集。わが家のマンガ会の様子が紹介されています。



開始当初は会話に花が咲くのですが、しばらくたつとたいていみな無言になるもので、果たしてページが成立するのか心配でありましたことよ。なんとか形になったようでなによりです。お恥ずかしながら手料理も。



右上のサラダは山本麗子先生のレシピです。ほんと簡単でおいしいんですよ。トマトときゅうりとカリフラワーで作るのですが、夏っぽいなと思わせつつカリフラワーだけ冬の野菜なのが謎です。でもまあ味がよくしみておいしいのです、カリフラワー。くれぐれもブロッコリー等で代用いたしませぬよう。マンガ部屋はこんな感じです。



斉木久美子先生の『かげきしょうじょ!』をオススメしておいたのですが、そこはカットされてしまったようです。代わりに微力ながらこちらでプッシュしておきます。


かげきしょうじょ! 1 (ヤングジャンプコミックス)

かげきしょうじょ! 1 (ヤングジャンプコミックス)


ちょっと毛色の変わったお仕事が続きましたが、とても楽しかったです。今後はライフスタイルの切り売りも積極的に展開していきたいと考えています(嘘)。


「Grazia」8月号で「ややヤン」をゴリ押ししています。

「Grazia」8月号のこちらの企画でコメントしています。



「ややヤン(ややヤンキー)」というキーワードを捏造し、少女マンガに見る「一億総ややヤン化」についてコメントしています。いや、でもそれなりにお役には立つはず…!

少女マンガにおける「ヤンキー」はいつかちゃんと研究しなきゃなーと思っているテーマのひとつです。たとえば別マにおけるくらもち派=中産階級文化系女子と紡木派=ヤンキー女子の対立?の歴史であるとか。いくえみ先生はペンネームからしてくらもち先生の直系ではあるのですが、内容的には「(くらもち+紡木)÷2」なんじゃないかと考えています。そして現在の別マには紡木派はほとんど存在せず、その系譜は「クッキー」に吸収されたのかなー、とも思っています。

しかしそれらをすべて吹き飛ばすのが東村先生です。あらゆる価値観を越境し、縦横無尽に描くことのできる東村先生の表現者としての強さを、いま改めてリスペクトするものであります。